残雪の黒川鶏冠山2009/03/29

鶏冠山より望む大菩薩嶺と富士山
 「今度はどこ行こうか?」と、図書館で山のガイドブックを捲っていたら、“黒川鶏冠山”が目に留まった。
 「山頂からの360度の眺望が素晴らしい」とある。
 富士山はもちろんのこと、南アルプスから奥武蔵・奥多摩の連嶺、ぐるりと回って、丹沢山塊まで一望できるとあれば、登らないわけにはいかない。
 27日(金曜)の予報では、今日(29日)は「曇り時々晴れ」で、展望の山旅は望めそうもなかったが、昨日(28日)になると、雲行きが変わってきて、29日の日中は晴れそうだ。
 う~ん・・・でも、テレビの天気予報はあんまりアテにならないしなぁ・・・
 てなわけで、28日の夜から今朝までかけて、塩山市一之瀬近辺の天気実況をインターネットで逐次確認し、更に、甲州市のホームページでアップされている各地のライブカメラもチェックして、晴天を確信したので、午前7時、いざ出発!

 奥多摩方面に出かける時の常店にしているコンビニで、いつもの通りカップ麺とお菓子(今日は、チョコとキャンディー)を買って、吉野街道経由で奥多摩へ向かう。
 この上ない(?)晴天の日曜の朝と言うのに思いのほか道路は空いていたので、1時間ちょっとで落合に着けると思っていたが、何台ものノロノロ車が、とっかえひっかえ行く手を塞ぐものだから、なかなかスピードが出せない。
 おまけに、登山口のある落合集落への曲がり角を見落としたため、ずいぶんと上ってしまった。
 Zaurusを開いて、国土地理院発行1/25,000地図(山の地図は、その日の登山に必要な範囲だけPDFにして持ち歩いている)とカーナビを見比べながら、来た道をUターン。
 「登山口近くに廃校がある」とのことだったので、それを頼りに下っていくと、確かに、車1台が通れる程度の枝道が右に向かっており、その先に、学校らしい建物と民家が見える。
 その道を右折し、45度はあろうかと思われる急坂を上っていくと、正面に、登山口の目印の赤い箱が見える。
 が、付近はみな畑か私有地のようで、駐車できる場所が見当たらない。
 近くの民家を訪ねて、居合わせたおばさんに訊いてみると「駐車場はないけど、みんな、下の道路に止めてるみたいよ」と教えてくれたので戻ろうとすると「1台だったら、そこに止めても良いよ」と、自分の敷地に置かせてくれた。(親切なおばさん、ありがとうございます)
 
 なんだかんだで予定より30分ほど遅れて登り始める。
 ところどころ雪の残る斜面を見ながら、針葉樹の落ち葉を踏みしめながら登っていく。
 ガイドブックの記述では、あまりメジャーなルートではないようだが、登山道はよく整備されていて歩きやすい。
 小さな沢にかかる一の橋を渡り、更に登っていくと、二の橋の手前で檜の倒木が行く手を塞いでいる。
 私たちは、右手斜面に上って倒木を回り込んで橋を渡ったが、上から見ると、倒木の手前で、小沢を跨いで踏み跡が登山道につながっているので、そちらを通れば楽だったのに・・・
 足元の落ち葉に広葉樹の葉が混じりはじめると、やがて、三の橋。
 ここから先は、登山道にもところどころ雪が残っているが、積雪は1、2cmで、雪の下は枯葉の層なので、大した危険はない。

 鼻歌交じりに、約1時間ほど登ると、鶏冠山と横手山峠への分岐点に辿り着いた。
 右に折れると横手山峠経由で山頂へ、直進するとまっすぐ山頂へ(左は「巡回路」とあるが、こちらは、我々登山者には関係ない)
 右の道にも直進にも雪はあったが、ここまでの経路からすると「どちらも大したことはないだろう・・・」と安易に考えて、直進したのがマズかった。(と言うか、こちらが山の北側斜面であることを思い出せば、この先の雪の状況は自ずと判断できたはずなのだが・・・)
 高度が上がるに従って、雪は登山道全面を覆うようになり、しかも、わずか2、3cmの雪の下は固く凍っているため、ステップを蹴り込もうとしても表面の雪を蹴散らすだけで、アイスバーンが表面に出てきてかえって危険だ。
 私たちは、約2kmの雪道を、何度か尻餅をつきながら、当初の予定の1.5倍の時間をかけて、ゆっくり慎重に登った。

 約1時間で山頂下の分岐に辿り着き、ここからは、大きな岩をいくつか超えて、鶏冠(とさか)のテッペンまで一気に上りきると、目の前に雄大な大菩薩嶺が飛び込んでくる。そして、その右裾には、僅かに黒い地肌が見え始めた富士山が並ぶ。
 思わず、「お~っ」と声が漏れる。
 ここからは360度の眺望はきかないが、木の間越しに、遠く雲取の頂まで望めたのには感動した。
山頂には、先着の二人パーティ(柳沢峠から来たとのこと)がいるだけで、狭いながらもゆっくりと腰を落ち着けて昼食を採ることができた。

 1時間ほど休憩した後、登ってきた岩ゴロの道を分岐まで下って、道標に従って、横手山峠・柳沢峠方面に進む(下りは自然とスピードが出てしまうので、さすがに、登ってきた雪の斜面をアイゼン無しで下る気にはなれない)。
 途中「見晴台」と書かれた道標があったので、登山道を外れてそちらに向かう。
 すると、横道を入ってすぐのところにひとつのピークがあり、これが「黒川山」。ここの山頂はだだっ広い台地状だが、360度木立に囲まれて、まったく眺望はきかない。
 更に、少し行くと、突然視界が開け、ドン詰まりの岩だらけのピークに飛び出す。

 今度は、真正面に南アルプスの白い山並みが、春霞の向こうに連なっている。目を右(北)に移すと奥千丈岳から国師ヶ岳、甲武信ヶ岳と連なる奥秩父の山々、もちろん、大菩薩嶺は指呼の間だし、その左裾の富士山は相変わらず勇壮だ。ここは、正に「見晴台」の名に恥じない場所だ。
 私が、この絶景に見とれている側で、ふと振り向くと、奥さんが傍らの岩に凭れかかってうとうとと居眠りを始めているではないか!!まぁ、今日は風もなく、ぽかぽかと日当たりが良い場所なので、無理もないか・・・(^^)
 目の前に広がる山並みを、何枚かデジカメに撮影した後、眠りかけている奥さんを起こして下山を始める。

 こちらの斜面は南側なので、ほとんど雪はなく、陽だまりの中の散歩よろしく、ぐんぐんと下って行った。
 横手山峠からは、左に柳沢峠への道を見送って、落合への道を下ったが、そこから午前中に通過した分岐までもほとんど雪はなく、しかも、あっと言う間に着いてしまった。
 「こんなに近いなら、こちらから登れば良かった」と今更思っても、後の祭り。
 でも、今日は久々に、登山のあらゆる醍醐味を満喫できて、とっても満足な1日となった。


(本日のコースタイム)
落合(8:50)―――(9:45)分岐(9:45)―――(11:05)鶏冠山(12:00)―――(12:15)黒川山(12:15)―――(12:20)見晴台(12:30)──―(12:50)横手山峠(12:50)―――(13:00)分岐(13:00)―――(13:30)落合