繋がった2014/05/03

  昨年の1月に、予想外の積雪でやむなく途中で引き返すことになった、奥多摩駅から御前山のルートを、リベンジすることにした。
 …と云っても、ルートが同じだけで、季節も気象条件も全く異なるのだから、果たして、本当のリベンジと云えるがどうかは、甚だ怪しいところだが…

 本当は、今年も1月に行こうと思っていたのだが、週末に限って天候が悪化するわ、おまけに、2月には記録的な大雪のため、奥多摩駅までも行けなくと云うオチまでついて、結局、今日まで延び延びになってしまっていたのだ。

 前回と同じ8時に歩き始める予定で、自宅を6:40に出発し、いつも通りコンビニで食料を調達してから青梅に向かう途中で、道端に「5月3日青梅大祭のため青梅街道通行止め」の看板に目が止まる。
 時間がわからないが、「まさか、こんな朝早くから、お祭りやらないだろう」とタカをくくって、そのまま青梅街道に向かうと、流石にお祭りはまだ始まっていないが、準備のための車が狭い道路のあちこちに停車していて渋滞している。
 普通なら数分で通り抜ける青梅の商店街を、15分ほどかけて過ぎると、あとは、連休初日とは思えないほど空いていて、奥多摩駅まで順調に進む。
 ところが、駅前の交差点を左折すると、キャンプ場手前の橋の上まで、10台ほどの車が並んでいて、動く気配がない。
 どうやら、駐車場がまだ開いていないらしい。
 これまでは、冬場の無料開放期間にしか利用することがなかったので、営業時間なんて全く気にしていなかった。
 開場の時間を確かめようと、車を降りて、駐車場の入口まで行ってみるも、どこにも営業時間は掲示されていない。
 管理小屋の方で何やら人の気配がするので覗いてみると、おじさんがいたので訊いてみると、「もうすぐ開けるから」とのことだったので、車に戻って山支度を整えながら待つ。

 8:10
 間もなく駐車場も開いて、昨年とほぼ同じ時間に歩き出すことができたが、もっと早くに出発したい時のために、別の駐車場も探しておいたほうが良いだろう。

 前回は愛宕山に登らなかったので、今回は、登ってみようと遊歩道の分岐を左に折れて暫く行くと、目の前に、急な石段が現れる。
 ちょうど、笠取山の西の肩への斜面のように、上に行くほど徐々に傾斜が急になっていて、下から見上げると、まるで垂直の壁に見える。

愛宕神社に続く急な階段
 
あとから、Webで調べてみると「最大斜度45度」などと書かれているものもあった。
 まあ、それは大袈裟としても、上から見下ろした感覚では、スキー場で上級者コースと呼ばれる35度以上(笠取山の最大斜度は約40度)はあるだろうこの階段のもう一つ特徴が、石段の奥行が狭いことだ。
 25.5cmの自分の足でも、真っ直ぐに石段に下ろすと踵がはみ出してしまって、爪先で歩くような形になってしまうため、距離(188段)の割には、意外と疲れる。

 階段を登りきると、そこは、不思議なことに神社の裏側で、戦没者慰霊碑と平和の鐘と名付けられたモニュメントが建立されている。
 てことは、あの急な階段は神社の参道と云うわけではない?
 そう云えば、階段の下にも上にも、鳥居はなかった。
 では、何のための階段なのだろう。
 わざわざ裏門に、あれほど急で歩きづらい階段を設けた理由は、一体何なのだろうか?

 そんな疑問を抱きながらも、社殿に回り込んで、今日の安全を祈る。

 参道を下って鳥居を抜けると、1年4ヶ月ぶりの登山口。
 さぁ、ここからリベンジの山歩きだ。

 コンクリート舗装された林道を暫く行くと、「鋸山」への案内表示に従って山道に入る。

今日は新緑の間を登る


 昨年は、踝まで雪に埋もれながら歩いた同じ道を、今日は、新緑に囲まれ、まるで夏のような気温の中を汗をかきながら登る。
 季節が違うだけで、全く別の山を歩いている気分になる。
 雪があれば直登できた斜面を、ジグザグにつけられた登山道に沿って歩くだけでも、新鮮味を覚える。
 下の方では、道端のツツジはまだ蕾だったが、標高が高くなるにつれ、開いた花が増えてきて、やがて、ほぼ満開のヤシオツツジの薄紫色が、緑の海の中にひときわ映えて見えはじめる。

満開を迎えたヤシオツツジ

 天聖神社を過ぎ、尾根道を暫く辿っていくと、足元に小さなピンク色の花を見つけた。

こんなところにイワカガミが群生していた

  コイワカガミ
 標高1000m程度の山で高山植物に出会えるなんて、何だか、すごく得をした気分だ。
 単調な尾根道を更に進むと、鎖場への分岐が現れる。
 昨年の冬は、迷うことなく左に折れて山道を登ったが、今日は迷うことなく右に折れて鎖場に向かう。
 大きな岩を回り込むと、鎖場が現れる。

木の根が滑って意外と登りづらい

 立派なガリー状の約4mの岩場は、見た感じでは鎖などなくても楽に登れそうだが、実際に手足をかけてみると、岩の間に垂れている木の根が滑って、スタンスが確保しづらい。
  最後は、やむなく鎖を握って身体を岩の上に持ち上げると、ちょうど、山道を回って来た奥さんと一緒になった。

 道はやがて鋸山分岐に着く。
 前回は、ここを直進して鋸山を越えて南側の巻道を戻って来たが、今日は、右に下って、直接大ダワに向かう。
 意外と急な坂道を降っていくと、左から巻道と合流する。
 
鋸山手前の分岐から大ダワに向けて下る

 昨年の1月に来た時は、深い雪にに埋もれていた足元に、今日はカタクリの花が並んで咲いていた。

大ダワ到着

 10:30大ダワ着
 昨年は、鋸山経由とは云え、ここに着いたのが12:30だったので、それに比べると、今回はとても余裕のある時間配分だ。
 しかし、今日の予定の奥多摩湖までの道のりを考えれば、まだ1/3が終わったに過ぎないので、のんびりはしていられない。

 天聖神社を過ぎた辺りからずっとガマンしてきたトイレだけを済ませて、登り始める。
 いくつかの小さなアップダウンを繰り返しながら徐々に高度を上げていくと、やがて、昨年の到着地点の鞘口山に着く。
 前回は、ここで東京都の森林レンジャーのパーティに出会い、この先はトレースがないことや、自分たちもここで引き返すこと、避難小屋から栃寄までの積雪の状況などを聞き、やむなく、レンジャーたちの後を引き返すことに決めたのだが、今回は何の心配も問題もない。
 さあ、先に進もう。

 ここから先は初めて歩くコースだが、木漏れ日の尾根道はどこも似たり寄ったりで、初めての気がしない。
 まるで、懐かしい原風景の中を歩くような、落ち着いた気分でいられる。

ここから先は初めてのルート

 ところが、クロノ尾山を過ぎた辺りで、突然、太腿が痙攣を始めた。
 病気になって3年目頃から頻繁に起こり始めた症状だが、今回は、こともあろうに両方同時だ。

「こりゃ、マズいな」

 片方だけなら、何とか誤魔化しながら歩けるが、両方ともとなるとどうにもならない。
 脚に負担がかからないように、ペースを落として歩くが、山頂直下の避難小屋分岐の直前で、遂に太腿が悲鳴をあげた。
 伸びきってしまった筋肉は、脚をあげるどころか、身体を支えて立っていることも難しくなって、無様にも、道端の木の切り株に寄り掛かって座り込む。

 心配そうにしている奥さんに

「少し休めば大丈夫」

 と、強がりながら、座ったままで屈伸やマッサージをしていると、少しは痛みがひいていく。

 昨年、鞘口山から引き返したあと、奥多摩湖から御前山を往復しているので、ここさえ登りきれば、奥多摩駅からのルートが繋がる。
 ここまで来て、登らないわけにはいかない。
 奥さんが剥いてくれたオレンジを食べて、立ち上がる。
 まだ、少し痛むが、何とかなるだろう。

御前山山頂はもうすぐだ

 道標の前で記念写真を撮ったのち、最後の登りに取り掛かる。
 ところが、いざ登り始めると、階段状の登山道は予想以上に厳しい。
 植生保護のために張られたロープの支柱と、ステッキにすがりながら、思い通りに曲げ伸ばしできない脚を持ち上げるが、4段も登ると強烈な痛みが戻ってくる。
 土留めの丸太に腰掛けて、少し休んでは、また4~5段登る。
 これを繰り返して、最後の登りに15分もかけて、ようやく辿り着いた御前山山頂は、ここまでのルートの静けさとは打って変わって、とても賑やかだった。

ついに繋がった!

 昨年、奥多摩湖から登ってきたときに座って昼食を摂ったベンチがちょうど空いたので、また、同じ場所で、同じ方向を向いての昼食となった。
 ただ、今日は、目の前に富士山が望めないのが残念だ。

 1時間ほど休憩して、奥多摩湖に向けて下り始める。
 昨年は、雪で滑らないように気をつけながら慎重に降った急坂を、今日は、砂くずに足を取られないように注意が必要だ。
 こう云う急坂は、自分の歩幅に合わせてステップがきれる雪山の方が、案外歩きやすいかもしれない。

奥多摩湖に向けて下る

  惣岳山とサス沢山を経由して、奥多摩湖には15:35に到着。
 遂に、奥多摩駅と奥多摩湖を繋げることができた。

サス沢山から奥多摩湖を見下ろす

 (本日のコースタイム)
氷川駐車場(8:10)---8:25)愛宕神社(:8:25)---(8:30)登山口(8:00)---910)天聖神社(9:10---(10:15)鋸山分岐(10:15)---(10:30)大ダワ(10:35---(11:05)鞘口山(11:05)---(11:30)クロノ尾山(11:30)---(12:20)避難小屋分岐(12:30)---(12:45)御前山(13:45)---(14:05)惣岳山(14:05)---(14:50)サス沢山(14:55)---(15:35)奥多摩湖

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