雨の中の木曽御嶽登山(1)2014/08/11

 今年は、仕事やら町内会やらで何かと忙しく、あまり山歩きができていない。

そんな、モヤモヤした日々が続いて、あっと言う間に夏山シーズン・・・

「さて、今年の夏は、どこ登ろう?

と、7月の中頃まで奥さんと話していたが、何の拍子か、

 「じゃぁ、木曽の御嶽山に登ろう」

 ってことになり、楽しみにしていた夏休み直前の台風11号の襲来。

 台風の発生以来、毎日、その進路が気になって、仕事も手に付かない状況だったが、何とか、10日には日本海に抜けそうだと云うことで一安心。

 今回は、下の息子も同行することになったので、とりあえず雨具だけは息子用に新調して、21:30、いざ出発。

 

 いつもの如く、途中のコンビニで食料等を調達し、日の出ICから圏央道へ・・・

 6月に東名海老名JCまで繋がったので、多少の混雑も覚悟はしていたが、交通量はこれまでとさほど変わりはなかった。

 八王子JCから中央道に入っても、目立った渋滞もなく、当初の予定通り、日付が変わる頃には伊奈ICを降りることができた。

 高速を走っている途中も、雨は降ったり止んだりしていたが、国道361号線から国道19号線に合流する頃には、雨はいよいよ勢いを増してきた。

 が、まぁ、大型の台風が通り過ぎたばかりなのだから、これくらいの残り雨は当たり前。

 歩き始める朝までに回復すれば良いわけで、天気予想図でも、出発直前の天気予報でも、今日の天気回復には自信を持っていたので、それほど心配はしていなかった。

 ただ、山歩きに慣れていない息子のことも考えて、当初予定していた六合目(中の湯)から歩くのではなく、ロープウェイで上がることにした。

これでコースタイムに1時間は余裕ができるので、万が一、雨上がりが多少遅れても、楽になる。

  木曽福島を過ぎて国道20号線に入って徐々に高度を上げて行くと、道路上に、沢山の木の葉や折れた枝が散らかっていて、通過した台風の勢いを改めて感じた。

この頃には、まだ雨は降っていたが、木々の枝の間から覗く空の一角には、月も見え始めていて、明らかに好天に向かっていると思われた。

 

1:40

御嶽ロープウェイの鹿の瀬駅前の駐車場に到着。

最大で1500台収容できると案内のある大駐車場には3台ほど車が止まっていたが、中に人がいるのかどうかはわからない。

センターハウスの真正面に車を停めて外に出てみると、雨は小降りになっていたので、天気の回復を確信し、5時まで仮眠をとることにした。

 

とりあえず血糖値を測っておこうと測定器のケースを開けたら、運転の途中で使ったため、穿刺針が少なくなっていたので補充しようと思い、旅行バック(今回は御嶽登山のあとに木曽観光も予定していたので、通常の旅行バックも持ってきていて、予備の穿刺針などはこちらに入れていた・・・はずだった)を探してみたが、どこにも見当たらない。

 いつもの癖で、ザックに入れたかと思って、そちらも探したが、やはりない!

 

 え゛っ!?

 

 ケースに残っている穿刺針は20本程度。

 今回は23日の予定だから普通ならば何とか足りるが、登山中や運転中の血糖測定を考えると、ちょっと心配だ。

 かと云って、今更どうにもならないので、とりあえず、穿刺針節約のため、仮眠前の測定はやめることにして

 

 まぁ、最悪、注射針を使えば良いことだから・・・

 

 と、自分のドジを慰めながら、眠りについた。

 

突然、フワッと浮き上がるような感覚に、思わず目を醒ますと、物凄い勢いで雨が降っていて、時折、猛烈な風が吹き付けてきて、車高のあるミニバンを揺らしている。

  時計を見ると4:00を過ぎている。

「おいおい、こりゃマズくない?

さっきまでの自信が揺らいでくる。

外はまだ暗く雲の様子を見ることはできないが、そうそう、収まりそうな様子ではない。

例え雨は止んだとしても、暫くは、強風は残るだろう。

ロープウェイの大敵は「風」だ。

しかも、ここのはロープウェイといってもスキー用の6人乗りの小さなゴンドラだから、少しの風でも大揺れして危険だ。

車が浮き上がるほどの突風なら、確実に運休だ。

予定の始発時間まであと2時間。

それまでに風が収まらなければ「運転見合せ」となってしまう。

折角、時間短縮を考えたのに、それでは意味がない。

そればかりか、運転開始の予定が立たなければ、ここで待つのは、かえって時間の無駄になってしまう。

ならば、このまま中の湯まで車で登って、当初の計画通りに歩くか?

ここから中の湯までは、車ならばすぐに行けるので、とりあえず、もう少し待ってみよう。

 

5:00

相変わらず、強風が吹いていて、横殴りの雨が車体を打ち付けている。

 

5:30

雨は多少弱まってきたが、相変わらず風は強い。

センターハウスには、従業員の方々が集まって、準備を始めている。

ひとりの女性従業員が、何か貼紙を持っていたので尋ねてみると、案の定「当面運休」とのこと。

当然のことながら、この風では、運転開始の予想もつかない。

 

6:00

始発の予定時間になっても、まだ、風が弱まらない。

この間に、何台かの車が上がってきたが、「運休」の貼紙をみて出て行く車もあった。

中には、明らかに登山姿の人もいたので、彼らは、おそらく中の湯から出発するつもりなのだろう。

さてはて、どうしたものだろう?

  中の湯から七合目まで1時間と考えれば、7;00までに上に着けるなら待つ意味もある。

逆に、下から歩くにしても、1時間程度の遅れならば、全体の行程の中で十分取り戻せるだろう。

よし、もう少し待ってみよう。

6:45

いくらか風も弱まってきているようだが、センターハウス裏の花畑から見上げる山肌を覆った厚いガスの塊が、勢い良く流されている。

上の方では、まだ強く吹いているのだろう。

ロープウェイのチケット売場のシャッターが開いていたので、声をかけてみると、先程の女性従業員が出てきて、

「まだわからない」

 と云う。

  仕方がない。ロープウェイは諦めて、六合目から歩くことにしよう。

車に戻って、出発の準備をしていると、女性従業員が急いで出てきて

「今、ゴンドラを出し始めたので、もう少しすると、運転開始できるかも知れません」

と、親切に教えてくれた。

もちろん、試運転もあるし、風の具合では見送りになる可能性もあるにはあるが、ここは決断するしかない。

奥さんと息子をたきつけて、急いで山支度を整えると、センターハウスに戻って往復チケットを購入する。

今回は息子も連れてきた


暫く待たされた後、運行開始のアナウンスに促されて乗り場に向かう途中で、冬はスキーゲレンデとなる緑の斜面を見上げると、綺麗な虹が、ちょうどロープウェイの軌道を跨ぐように架かっているのが見える。

その虹は、なかなか消えることなく、自分たちを乗せたゴンドラは、七色に輝く橋の下をくぐって、飯森高原駅へと登って行った。

 

ゴンドラは、虹の架け橋をくぐって上っていく


15分かけて到着した飯森山頂駅は、薄いガスに覆われていて、展望は良くない。

こと、ここに至っては、数時間前までの自信は跡形もなくなって、天気図と天気予報への不信がつのるばかりだ。

この調子では、「台風一過」なんて楽観ばかりはしていられない。

どうも、今年の天気は、過去の経験則通りには運んでくれないようだ。

とは云っても、台風は既に遠く離れているし、急激に大きく崩れるような気圧配置でもなさそうなので、途中で多少降られても、山頂に着く頃には回復してくれるだろう。

などと、やはり、過去の経験に頼りながら、雨具のジャケットを羽織って出発。


息子にとっては何年ぶりの登山だろう「


 

暫く桧のチップが敷き詰められた遊歩道を進むと、10分ほどで七合目の行場山荘に着く。当初の計画から、ちょうど1時間の遅れだから、天気さえもってくれれば、十分に遅れは取り戻せる。

ところが、八合目の女人堂までの登りで、予想外に手こずってしまった。

今朝まで降っていた雨のおかげで、登山道には水が溢れて、小川のようになっていて、段差を小さな滝となって流れ落ちている。

岩が露出している部分はまだ良いが、丸太や角材で作った階段はツルツルと滑りやすくなっているため、慎重に足場を選びながら登るので、思いのほか時間がかかってしまう。

木製の段差は、雨に濡れて滑りやすい

 

登山道には、小川のように水があふれている


 その上、歩いている途中で手首にぶら下げていたデジカメを、水溜りに落としてしまった。

 穿刺針を忘れたことと云い、予定外の風雨と云い、何だか、今回の山行はついてないなぁ・・・

 

 からまつやしらびその樹木の間を、ひたすら登り続けること約45分。

 目の前に“ラーメン”と書かれた幟が現れ、続いて“うどん”の幟・・・

 見上げると、雨の紗幕の向こうに、比較的大きな山小屋が見えた。

 晴れていれば御嶽山の展望が素晴らしいのだろうが、今日は、10m先も霞んでよく見えない。

 降りかかる雨も、次第に強さを増しているようだ。

 とりあえず記念写真だけ撮っておこうと、小屋の庇の下でデジカメの電源を入れたのだが、液晶画面が映らない。

 何度か、電源をON/OFFしていると、ついに、POWERLEDさえ点かなくなってしまったので、仕方なく、スマホのカメラで撮影する。

女人堂・・・雨は止みそうにもない


 

 何てこった!

 23日の旅行の初日だと云うのに・・・

 

(つづく)