発病、入院、そして・・・(2)2009/03/01

血糖値:426mg/dl
HbA1c:12.7%
グリコアルブミン:52.0%
尿ケトン:4+

これが、初診時の検査結果だったが、糖尿病についてまったく素人の私には、これらの数値の意味を理解するのは難しく、「できれば今すぐにでも」との医者の入院勧告を聞かなかったことにして、「仕事の引継ぎがあるから」と理由をつけて、翌々日からにしてもらった。
仕事の引継ぎと言っても、実際にはほとんどひとりで完結できる案件ばかりで、1週間や10日程度であれば、わざわざ誰かに引き継いでおかなければならないような仕事はなかったが、例え1日でも猶予があれば、事態は好転するのではないかという期待も、なきにしもあらずであった。
しかし、そんな私の僅かな期待は、翌日の昼過ぎには、音を立てて崩れていた。
椅子に座っているだけでも身体の心から力が抜けて、口を開くのも億劫で、結局、「まぁ、あとは適当にやっといて、分からないことあったらメール入れてくれれば良いから・・・」と言い残して早々と退社した。

入院初日
病室に案内される前に体重を測ると、何と51.4kg!!!
春の連休明けに測った時が62kgだったから、2ヶ月足らずで10kgの劇痩せである。
ダイエットに苦労している世の女性たちにはまったく羨ましい限りなのかも知れないが、別にダイエットをしたわけではない私は、この期に及んで、ようやく、尋常ならない身体異変を認めざるを得なくなった。

私が案内された4人部屋には、すでに3名の先客がいた。
2名は外科の患者さんで、あと1名が、糖尿病の教育入院とのこと・・・
パジャマに着替えて待っていると、若い看護士がやってきて、私の右人差し指にペン状の器具を押し付けたかと思う間もなく“チクリ”・・・生まれて初めて、血糖自己測定(もっとも、この時は「自己」ではなかったが・・・)と言うものを体験した瞬間だった。
その後、2日前に診察してくれた医者がやってきて、足の付け根にぶっとい注射器を突き刺すと、大量の(?)採血をして行った。
それから、点滴・・・終わるまでに5時間はかかったろうか・・・
更に、私には「24時間分の尿を採るように」との指示があり、そのやり方を教えてもらった。

翌日も、私の左手には、1日中点滴のチューブが巻き付いていた。
私は、この2日間で、自分の置かれた状況を何とか理解しようと努めたが、頭の中の混乱は、そう簡単には収まってはくれなかった。
当時私が糖尿病について知っていることと言えば、「生活習慣病(昔は成人病と呼んでいた)」で、「不摂生」とか「贅沢病」とか「自己管理ができない」など、とにかく社会的マイナスのイメージしかなかったため、私は、この現実に対して自分を責めるしかなかった。

入院3日目に、主治医から、良い報せと悪い報せを同時に聞かされた。

私の糖尿病は自己免疫による膵臓の細胞破壊によるもの(自己免疫性1型糖尿病)で、生活習慣病ではないこと。
この一言で、自分自身の過去を責めたり悔やんだする必要はなくなり、ホッとしたのも束の間、次の言葉は、新たな試練の幕開きとなった。
「これからは、毎食前にインスリンを打つことになりますので、今日から注射の練習をしましょう」

こうして、1日4回以上の血糖自己測定と、1日3回(現在は5回)のインスリン自己注射が、私の大切な日課となり、血糖測定器とインスリンは、どこに行く時にも手放せないアイテムとなった。