久々の山登り ― 2012/08/11
8月10日 21:30
「お盆前半は天気は良くない」と云う天気予報の中、2人分のザックと登山靴を車に積み込んで、自宅を出発。
圏央道日の出ICから入って、西に向かう。
中央道は、いつもの如く、相模原と談合坂付近で少し混んだ程度で、特に渋滞もなく甲府昭和ICに到着。
高速を降りて国道20号線(甲府バイパス)も順調に進み、南アルプス街道(県道20号線)の芦安入口交差点から先は、ほとんどすれ違く車も、前後を走る車もなくなり、23:20、予想よりも30分も早く広河原行きバス停のある芦安市営駐車場に到着。
バス停に一番近い第2駐車場の入口には「満車」の看板が出ていて、一瞬迷ったが、入ってみるといくつも空いているので、真ん中付近に車を停める。
天気が心配なので、少しでも早く歩きだせるようにと、5:30の始発バスではなく、5:10の乗り合いタクシーを利用することにして、車中で仮眠する。
「お盆前半は天気は良くない」と云う天気予報の中、2人分のザックと登山靴を車に積み込んで、自宅を出発。
圏央道日の出ICから入って、西に向かう。
中央道は、いつもの如く、相模原と談合坂付近で少し混んだ程度で、特に渋滞もなく甲府昭和ICに到着。
高速を降りて国道20号線(甲府バイパス)も順調に進み、南アルプス街道(県道20号線)の芦安入口交差点から先は、ほとんどすれ違く車も、前後を走る車もなくなり、23:20、予想よりも30分も早く広河原行きバス停のある芦安市営駐車場に到着。
バス停に一番近い第2駐車場の入口には「満車」の看板が出ていて、一瞬迷ったが、入ってみるといくつも空いているので、真ん中付近に車を停める。
天気が心配なので、少しでも早く歩きだせるようにと、5:30の始発バスではなく、5:10の乗り合いタクシーを利用することにして、車中で仮眠する。
8月11日 4:00
駐車場に入って来る車が多くなってきて、周囲が少し喧しくなってきたので、予定より少し早めに起きて外に出て見ると、上空には、薄らと雲があるものの月も星も出ていて、予想していたよりも天気はもちそう・・・
後部座席で寝ている奥さんを起こして、支度を始める。
少し下の第3駐車場のトイレに行って戻って来ると、早くも乗り合いタクシーが何台か停まっていて、お客さんが乗り込んでいる。
「あれ・・・5:10より早いのがあるのかな?」
と思って運転手に訊いてみると、出発は5:10だと云う。
要するに、夜叉神峠のゲートが5:30にならないと開かないので、これより早く出ても同じなのだそうだ。
そうこうしているうちに、次から次へとお客さんが乗り込んでいるので、急いで車にザックを取りに戻って、2台目のワンボックスタクシーに2人分の席を確保した。
5:10
5~6台の乗り合いタクシーは、それぞれ定員を乗せて、広河原に向けて出発。
徐々に明るさを増す上空には、やはり薄雲が広がっているものの、ところどころ青空も顔を覗かせている。
タクシーの運転手さんによれば、山の天気は「(夜叉神)トンネルを超えて見ないと分からない」とのことだが、この調子なら、少なくとも午前中は大きく崩れる心配はなさそうだ。
暫く窓から景色を眺めていたが、ウトウトとしはじめた。
いくらシートをフラットにしたと云っても、車中では、布団で寝るように熟睡はできない。
目を閉じている内に、眠ってしまったようだ。
フト気付くと、車が停まっている。
「えっ・・・もう着いた?」
と窓の外を見ると、まだ、山の途中で、前にも、何台か車が並んで停まっている。
夜叉神ゲートが開くのを待っているのだ。
・・・ってことは、出発からまだ20分も経っていないことになるが、随分長い時間眠っていたような気もする。
疲れてンのかな?
やがてゲートが開いて、いよいよ、夜叉神峠を超える。
夜叉神、観音経の2本の長くて狭いトンネルを抜けて暫く進むと、突然、目の前の山並み(池山吊尾根)の向こうに、雄大な北岳が姿を現す。
空は青く晴れ渡っている。
6:00
予定より少し早く広河原に到着。
アルペンプラザ2階の登山指導所に登山届を提出した後、朝食を摂るためにバス停のベンチに戻ろうとしたところ、甲府駅からのバスが到着して、あっと云う間に大賑わい・・・何とか2人が座れる場所を確保して、慌ただしく、朝食を済ます。
6:30
出発!
車止めゲートの手前で、警察と遭対協ボランティアが、登山者にとりひとりに声を掛けて、「大樺沢の雪渓部は、安全のために夏道を歩く」ように指導していた。
野呂川に架かる吊橋を渡って広河原山荘前に出て、いよいよ、今年の夏山登山の開始だ。
今年は、5月の連休も三頭山に行っただけだし、先月の富士登山も豪雨のために中止となったため、今回の北岳行が今年の初登山と云っても良いくらいで、久々の山の清冽な空気に全身を包まれて、気持ちは早くも高ぶっていた。
暫く樹林帯を行くと、白根御池の分岐が現れるが、前後を歩いている登山者のほとんどは、大樺沢沿いのルートを直進して二俣に向かう。
もちろん、八本歯のコルから北岳山荘を目指す自分たちも、躊躇なく直進する。
ガレ場に架かった立派な鉄パイプの橋を渡って、右岸の灌木帯を暫く登った後、再び左岸に戻ると、目の前に、雪渓が現れる。
この付近は大樺沢雪渓の下端部でそれほど大きくないが、見上げると、八本歯のコルから切れ落ちたV字谷の雪渓が、左右の斜面の木々の緑色の間に白く続いている。
こんなに大きな雪渓を間近にみるのは、10何年振りだろうか・・・
ここから先の行程に胸をワクワクさせながら、8:40、大樺沢二俣に着く。
広河原から約2時間半・・・
全く足慣らしをしていない状況で、ほぼ標準タイムでここまで来られたのは、まぁまぁだ。
天気が思わしくなければ、ここから右俣ルートで肩の小屋に向かうコースに変更する予定だったが、頭の上には真っ青な夏空が広がり、全く天気が崩れる気配はないので、約20分の休憩の後、当初の予定通り八本歯のコルを目指して登り始める。
二俣を出て直ぐに20mほどの雪渓をトラバースして、いよいよ、雪渓帯に取りつく。
頭の上には、かの有名な北岳バットレスが、覆いかぶさるように迫って来る。
山ヤにとっては、これほど感動的な眺望はない。
山の霊気を全身に感じながら高度を上げて行く。
振り返ると、野呂川対岸に連なる鳳凰三山が、徐々に高度を下げて行く。
この上ない幸せな気分に浸りながら歩いていたが、雪渓帯を過ぎた辺りで、突然、右の太腿が痙攣し始めた。
雪渓をトラバースした後、少しルートを外れて、崩れやすい斜面を登った時から何となく感じていた違和感が、ここにきて鋭い痛みに変わった。
この痛みは、5年前に1型糖尿病を発症する直前に、川苔山で初めて経験した痛みと同じだ。
「こんな所で動けなくなるわけにはいかない!」
何とか気持ちを振り絞って、右太腿をかばいながら歩いていると、今度は、左の太腿にも痛みが襲ってきた。
こちらは、右ほどの痛みではないが、油断をするとバランスが崩れてしまう。
その内に、右脚は、ちょうど女の子が髪留めに使っている「パッチン留め」のような状態になって、曲げ伸ばしの自由が利かなくなってきた。
膝を伸ばすと、太腿の筋肉がピンと伸びてしまって曲がらなくなり、痛みを堪えて曲げると、今度は、伸ばすのに鋭い痛みに耐えなければならない。
正に、パッチン留めを、前後に「パチン、パチン」とやっているような状態だ。
ザックからサロンパススプレーを取りだして、両方の太腿にスプレーする。
暫く休んでいると、少しは楽になってきたので、再び登り始めるが、30分もしない内に痛みが戻ってきて、ほとんど進めない。
特に、大きな岩を乗り越える時は、一苦労だ。
その上、ここから先には、梯子が続くので、嫌でも、大きな膝の曲げ伸ばしが必要になる。
とにかく、これ以上酷くならないようゆっくり登ることにして、奥さんを先に登らせた。
ガレ場は、それでも、何とか屈伸が少なくなるように足場を選びながら登れたが、最後の梯子の連続では、そうはいかない。
後ろから来た団体を先に行かせてから登り始めたが、一段一段、右太腿をかばいながら登り、ひとつ梯子を登りきる度に、痛みが和らぐのを待つと云った状況だから、遅々として進まない。
時間ばかりが過ぎて行く。
振り返って鳳凰三山を眺めても、眼の高さは、先ほどとほとんど変わらない。
「あぁ、情けない!」
12:50
最後の梯子を登り終え、漸く、八本歯のコルに到着。
ゆっくり歩いても2時間半程度で着くつもりだったのに、大幅に遅れてしまった。
予定なら、もうそろそろ、北岳山荘に到着する時間なのに・・・
先に登っていた奥さんと合流し、昼食にしようか迷ったが、ガスも上がって来ているし、この脚では、ここから先もスピードアップは期待できないので、ふかし芋とオレンジだけ食べることにした。
巨岩が積み重なった尾根をひと登りすると、北岳山荘へのトラバース道分岐に出る。
ここから先は、大きなアップダウンはないので、この脚でも、何とか予定通り進めるだろう。
トラバース道は、白根三山主稜の南東斜面につけられた、いわば、北岳山荘への近道で、斜面に咲き乱れるたくさんの可憐な高山植物が、これまでの疲れを癒してくれる。
まだ痛みはあるが、立ち止まって花々の写真を撮る余裕も生まれる。
山歩きは、これが良いのだ。
どんなに苦しくても、諦めずに歩き続ければ、山は必ずご褒美をくれる。
フト、初めて穂高に登った時を思い出した。
あの時は、北穂のテント場で大雨に降らたお陰で風邪をこじらせて熱もあったが、それでも、翌日穂高岳山荘まで縦走した結果、素晴らしい夕陽と、手に届くほどの満天の星空と、翌朝の荘厳な御来光の瞬間を、まとめて経験することができた。
あの感動は、今でも、鮮明に覚えている。
確かに、冷静に考えれば、一歩間違えれば重大な事故につながる無謀な行為かも知れない。遭対協や警察の方からは、叱られるかもしれない。
しかし、多少の無茶をしなければ、超えられない壁は必ずあるものだ。
安全確実の中だけで得られるものは、決して多くはない。
社会人1年生だった自分に、あの時の穂高は、そのことを教えてくれたのかも知れない。
14:50
当初の予定より2時間遅れで、北岳山荘に到着。
宿泊の手続きをしていると、受付の人が、「今日は混むかもしれないので、布団1枚2人になるかも知れません」と云われた。
もちろん、夏休みだから覚悟はしていたが、それでも、少し気が滅入る。
あてがわれた部屋は2階の「八本歯」で定員は9名。部屋に行ってみると、既に、2家族5名が先着していた。
ズボンをジャージに履き替えて、暫く脚を休めていたが、痛みはなかなかひかない。横になった状態でも、少しでも膝を曲げ伸ばしすると、太腿から踝までが吊る。
これまでも、登山中に脚が吊ったことは何度もあるが、こんなに長時間、何度も繰り返すことはなかったので、翌日の行程が非常に心配になってきた。
痛みをこらえながら、原因をいろいろ考えて見る。
荷物が重すぎた?いや、1泊登山では、いつもと殆ど変らない。
行動中の水分不足?いや、むしろ今回は、いつもより多く水分補給している。
やっぱり、トレーニング不足?それは否定できない・・・
・・・で、ふと気付いたのが、スパッツ。
今回は、初めて、ズボンの下にハーフスパッツを履い来たのだ。もちろん、今も、ジャージの下に履いていて、太腿を締め付けている。
まさか・・・!?
急いでスパッツを脱ぐ。太腿が圧迫から解放される。
暫くすると、痛みと痙攣が治まってきた。曲げ伸ばししても、さっきの様にひどく吊ることはなくなった。
歩いている途中で気付いていれば、もっと早く楽になれたかも知れなかったのに・・・
「明日は、スパッツは履かないで行こう」
16:30
夕食のために食堂に行く。
ここのメインディッシュは煮魚(カレイか何かの白身の魚)・・・
多くの山小屋ではハンバーグがメインのようだが、標高3000mで海の魚と云うのが面白い。
食事の途中に小屋の方からあった天気予報では、明日(12日)は、午前中曇り、午後晴れとのこと。
食事中の登山客が、一斉に、歓声を上げる。
おそらく、みんな、下界の天気予報で「連休前半は天気が良くない」と云うのを聞いていたのだろう。
食堂では気付かなかったが、部屋に戻ってみると、窓の外から雨音が聞こえる。
風もかなり吹いているようで、小屋に叩きつける雨粒の音も激しい。
「先ほどの天気予報の通り、朝までに止みますように」
この日は、結局、宿泊者は定員にならなかったため、一人布団1枚でゆっくり眠ることができた。
(本日のコースタイム)
広河原(6:30)---(6:50)白根御池分岐(6:50)---(8:40)二俣(9:00)---(12:50)八本歯のコル(13:05)---(14:50)北岳山荘
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