1年振りの南アルプス2013/08/15

 「今年の夏は、鳳凰三山を縦走しよう」と早くから決めていたので、特にアタフタすることなく、余裕を持って準備はできたが、ひとつだけ誤算だったのは、山から帰ってくる予定の17日が、町内会の納涼大会で、ウチの隣組はトウモロコシの販売担当で、朝から準備に出なければならなくなったことだ。
 近所の皆さんにお手伝いをお願いしておきながら、隣組長が出ないのは、さすがにマズいだろう。
 かと云って、今更予定を変更するわけにもいかないので、納涼大会の準備には息子に代理で出てもらって、なるべく早く帰ってくることにしよう。

 てなわけで、14日の21:45、予定通り、2人分の山道具を車に積み込んで、1年振りの南アルプスに向けて出発...

 いつもの如く、途中のコンビニで食料を調達して、日の出ICで圏央道にのる。
 
 23:50
 芦安駐車場に到着したのは昨年とほぼ同じ時間だったが、今日は、車は沢山停まっていた。
 入り口でザッと見渡しても、ほぼ満車状態だったが、進入したラインの奥に、運良く1台文学だけスペースが空いていた。
 車を停めて、仮眠をしようとシートを倒した時、何だか気持ちが悪くなったので血糖値を測ってみると、59...
 車を運転した後は、いつも250とか300とか、高血糖になっていたのに、何で今日は低血糖なのだろう?
 しかも、今日の夕飯は、それでなくても高血糖になりやすいカレーだったのに...
 いくら考えても、低血糖になる原因には思い至らなかったが、何はともあれブドウ糖を飲んで、眠前のランタスは打たないでおこう。

 倒したシートで横になっていたら、ブドウ糖のお陰で気分も落ち着いてきて、そのままウトウトしていたが、やがて、目が回るような不思議な感覚に襲われて、眼が覚めた。
 スマホの時計を見ると3:40
 あまりの気持ち悪さに、もう一度血糖値を測ってみると、今度は56...さっきよりも下がっている。
 急いでブドウ糖を飲んで横になっていると、にわかに、駐車場が騒がしくなってきた。
 外に出てみると、駐車場の入り口で、4、5名のガードマンが赤色の誘導灯を振り回しながら車を誘導していて、すでに、乗り合いタクシーも到着している。
 始発は5:10頃のはずだったが...?
 近くにいた係の人に訊いてみると、最近は登山者が多くて、5:00には長い列ができてしまうので、早く来て順次乗せているのだそうだ。
 そうこうしているうちにも、駐車場のあちこちから、ザックを担いだ登山者たちが現れて、タクシー乗り場に集まってくる。
 慌てて車に戻ると、奥さんを急かせて支度を整えて、何とか2人分の席を確保した。

 タクシーに乗り込んで出発を待っていると、若い3人組の一人が、運転手に「山の地図がないか?」訊いている。

 えっ?
 一瞬、耳を疑った。
 仮にも南アルプスの山に登ろうと云うのに、地図も持っていない?
 ジロジロ見るのは気が引けるので、耳だけダンボにして、若者と運転手の話を聞いていると、どうやら、3人組は「北岳」を目指しているらしいのだが、ルートのことは何も知らない様子だ。
 運転手が、どこに泊まるのかと訊くと、若者は、何の躊躇いもなく「日帰り」だと云う。
 思わず、顔を向けてしまった。
 暫くして、他の運転手が観光パンフレットを持ってきて若者に手渡すと、その若者は仲間2人とパンフレットの地図を眺めながら

 「あいだのたけにも行きたいンだけどな」

 ...あいだのたけ?

 目がテン

 おいおい、そりゃ「間ノ岳」って書いて「あいのたけ」って読むンやでぇ
 地図も持たない、事前の登山計画もしていない、その上、山の名前も知らない
 こんなバカ者でも、平気で山に登る時代なんだなぁ

 そんな思いを駐車場に置き去りにして、予定通りの5:10に出発した乗り合いタクシーは、山の神ゲートを通過して、一般車両通行禁止の南アルプス林道を、一路、夜叉神峠に向けて登って行った。

(つづく)