予想外れの・・・2013/02/09

 水曜日に雪が降ったので、また、雪を求めて奥多摩に向かう。
 と云っても、今日は、登山ではなく、奥多摩むかしみちを歩いてみることにした。
 昨年2月に初めてここを歩いた時も、青目不動尊から水根園地にかけて、結構雪があったので、今回はもっと雪山歩きが楽しめるだろう。
 それに、このコースなら、先月の御前山登山のように、下山の時間を気にする必要もない。

 いつもの通り、無料開放の町営氷川駐車場に車を停めたのは11:00少し過ぎ。
 道路に出て、向かいの愛宕山公園を見ると、先月は真っ白だったのに、今日はまったく雪がない。

 「あれ?」

 いきなりの拍子抜け・・・

 「う~ん・・・でも、上まで行けば、雪あるよね」
 
 期待を胸に、歩きだす。

 ビジターセンターでトイレに行ったついでに、御前山方面の雪の状態を聞いてみると、積雪は20cm程度で、先月ほどではないらしい。
 どうやら、1月14日の雪は、やはり特別だったようだ。

 「そーなのぉ?」

 今日は少し時間が早いので、いつもは階段の下からお参りしている羽黒三田神社に登ってみることにした。

羽黒三田神社へは、急な石段を登る

 羽黒坂の途中の長くて急な石段を登って行くと、民家のそばに道祖神が祀られていて、参道は、そこから更に登っていく。
 神社への道標と一緒に掲げられた鷹ノ巣山・雲取山への道標を見ていると、5年前(1型糖尿病発症翌年)のGWに雲取から鷹ノ巣を縦走して奥多摩に下った時の記憶が、おぼろに蘇ってきた。
 そう云えば、登山道の脇に板張りの神社があったような・・・

 山道をひと登りすると、見覚えのある鳥居と板張りの社が現れた。

 「あぁ、ここが三田神社だったンだ」

 自分が歩いてきた道が、5年の歳月を経て、交わった。
 こう云う経験って、何か、とても嬉しい。
 場所との出会い、ひととの出会い、ものとの出会い・・・
 出会いとは、いつも偶然の産物でありながら、そのくせ、いつもどこかで繋がっている。
 ほとんどの場合、そのことに気付かずに、すぐ傍をすれ違ってしまっているが、たまに、こうして交わることがある。
 人生の機微といえよう。

 社に近づいてみると、格子扉に、登山靴が描かれた絵馬が飾られていた。
 どこかの山好きが、登山の安全祈願をしたのだろう。
 この絵馬に、自分達の今日の安全も託して、お祈りする。

誰かが登山の安全を祈願したのだろう
 
 鳥居の下の山道を左にとって林道に下り、さいかちぎに向かう。
 奥多摩のパンフレットでも、ほかの人のブログでも、「さいかちぎ」を「槐木」と漢字表記しているが、これは間違っている。
 「さいかち」の正しい漢字は「梍」であって、「槐」は「えんじゅ」・・・
 梍と槐は、いずれもマメ科の落葉樹ではあるが、異なる植物である。
 梍は偶数羽状複葉で棘があるのに対し、槐は偶数羽状複葉で棘はない。
 では、ここの「さかいちぎ」は、本当はどちらだろう・・・?

 小留浦の民家の間を過ぎて多摩川沿いの木漏れ日の道を歩いていると、左側の斜面にゆずの木が並んでいる。道路側の枝の実は、誰かがもって行ったのだろう。ガードレールから身を乗り出しても手の届かないところに、可愛い黄色の小さなゆずの実が、たわわにぶら下がっている。

多摩川の斜面にたわわに実ったゆず

 檜村の集落まで来ると、道路の脇や、畑や駐車場の片隅に雪が積まれていたが、予想していたほどではない。
 昨年は、不動の上滝付近の路面は白く凍っていたが、今日は、黒いアスファルトの路面がむき出ているし、白髭神社手前の岩清水も、今年は凍っていない。
 やはり、1月14日の雪は特別で、今年は、全体的に気温が高いと云うことか?

左下は昨年2月の写真

 白髭神社を過ぎると、みちは、国道411号線の下に出る。
 ここからは、左手に惣岳渓谷を見下ろしながら進む。
 しだくら橋を過ぎて暫くすると、何だか、頭がボーっとしてきた。
 時計を見ると12:00を過ぎている。
 今朝は、インスリンを普通に打ったので、そろそろ低血糖がでてくる時間だろう。
 しかし、この付近には、落ちついて腰を降ろす場所はないので、とりあえず、ゼリー飲料を一口飲んで、西久保園地まで歩くことにする。

 西久保園地のベンチに座って、買ってきたおにぎりを食べる。
 気温は低いと思うが、風がほとんどないので、じっと座っていても、それほど寒さは感じない。
 お腹がふくれると、ウトウトしてくる。
 
 ここから、ルートは再び山道となる。
 巨大なコンクリートの壁を左に見ながら木立の中をゆったり登ると、ルートは一度民家の軒先を通過し、再び山道となると、正面に陽光に照り輝く奥多摩湖が姿を現す。
 山の斜面につけられたルートを更に辿ると、右に、浅間神社の道標があり、本道を逸れて少し登ると丸太で作られた鳥居とこじんまりとした板張りの社がある。
 
 浅間神社にお参りをした後、再び、落ち葉の積もる山道を歩いていくと、これまで見たことのない看板が目に付いた。
 水根新道の解説が書かれたものだが、はて、こんな看板あったっけ?
 疑問に思いながら更に進んでいくと、不思議なことに、道はどんどん下って行き、やがて、国道411号線に降りてきてしまった。

 「ありゃりゃ???」

 頭の中は、クエスチョンマークに占拠された。

 「何で?」

 浅間神社を出てから一本道だったはずだ。
 どこで道を間違えたンだろう?

 たぬきがきつねに化かされた!?

 一旦戻ろうかと思ったが、ふと見ると、道の脇に小さな階段が作られていて、水根貨物線の軌道に登れるようになっている。
 前から気になっていた廃線跡・・・
 階段を登ってみると、そこはトンネルの出口で、奥多摩湖方面に続く軌道も、枯れ草に覆われてはいるが歩けそうだ。

知らない内に、廃線の軌道跡に降りてきてしまった

 折角だから、軌道を歩くことにした。
 短いトンネルを抜けると、国道の上に架かる鉄橋を渡る。
 足元の枕木はところどころ朽ちてはいるが、歩くのに不自由も不安もない。
 たった5分の短い距離ではあったが、廃線跡を歩けたのは、何だかすごく得をした気分だ。
 (家に帰ってから調べてみたところ、以前は、一部廃線跡をたどるコースもあったようだ)

 楽しみにしていた雪が全くなかったのは残念だったが、冬の陽だまりハイクも楽しいもんだ。