随分遅れた2011年初登り2011/04/30

残雪の稜線を、赤城山最高峰の黒桧山に向かう
-山には、きびしさをもって我々に対するものと、暖かく我々を包容してくれるものと、二種類ある-

 かの深田久弥氏が、名著「日本百名山」の中で、「その後者の代表である」と賛美した赤城山で、遅ればせながらの今年の初登りを行った。

 朝6時に自宅を出発し、久々に、青梅ICから圏央道に入って、関越道に向かう。
 GW2日目と云うこともあってか、圏央鶴ヶ島ICを過ぎた辺りから車の量が増えてきて、鶴ヶ島JCでは、“渋滞”とまではいかないまでも、少し長い車列ができていた。
 この後も、花園ICから嵐山PAにかけて混雑していたため、前橋ICまで2時間近くかかってしまった。
 
 国道4号線(東国歴史文化街道、途中から上毛三山パノラマ街道)経由で、大沼に到着したのは8時半。
 一度は駒ケ岳登山口正面の駐車場に車を停めて山支度を整えたが、黒桧山から下山後、ここまではちょっと距離があるので、もう一度車に乗って、赤城神社の駐車場(登山口と下山口の中間付近)まで行く。
 ・・・が、手前の広いドライブインの駐車場が空いていたので、また少し戻って、結局、登山口から5分程度のところに停めることにした。

 登り始めて暫くは、岩の転がる登山道を行くが、途中から木製の階段が続くようになり、何だか、2年前の夏に登った榛名山が思い出された。
 こちらの階段の段差は、榛名山のそれほど高くはないので、さほど違和感はなかったが、それでも人工の段差は自分の歩幅には合っていないので、やはり疲れる。
 踏み板の隙間から階段の下の斜面を覗くと、いかにも歩きやすそうな自然の凸凹があるのに、上部の少し急な斜面には、立派な鉄の階段までかけられていて、何だかとっても物足りない気分だ。

 深田久弥氏が、あまりに人の手の入り過ぎた今のこの状況を見た時、果たして、百名山に選んだろうか?

 などと考えなら、行程の半分以上を階段登りに費やして辿りついた尾根からは、山頂に電波塔の立ち並ぶ地蔵岳と長七郎山の間に小沼の水面が、朝日に照らされ輝いていた。
 そこから暫く尾根道を行くと、駒ケ岳の山頂に出る。
 山頂と云っても、三角点も立派な道標もない小さなピークに過ぎないが、南東面が開けているので、天気が良ければ関東平野の展望は素晴らしいことだろう。
 あいにく、今日は曇っていて遠くまで見渡せないので、先着していた登山者の方に記念写真を撮ってもらって、早々に、黒桧山に向けて下り始める。

 北向きの斜面には、駒ケ岳直下から残雪があり、下りきった大タルミには、30cm程度の積雪が、ちょっとした雪原を作り出していた。
 ここからは、標高差約180mを一気に登る。
 ところどころ木製の階段はあるが、基本は尾根道なので、駒ケ岳への登りほど苦にはならない。
 急な傾斜を登りきったところに「黒桧大神」が祀ってあったので、今日の楽しい山歩きのお礼とこの先の安全をお祈りする。
 小さな鞍部を超えて、10:30、赤城山最高峰の黒桧山の頂上に到着。
 山頂には、既に幾つものパーティが、思い思いの場所で休憩していたが、意外と、小さな子どもを連れた親子パーティが多いのに驚いた。

 風もなく穏やかな山頂だったので、時間はちょっと早かったが、食事にすることにした。
 いつものごとくお湯を沸かして、カップ麺を作り、コンビニで買ってきたおにぎりを食べる。
 昨年12月の扇山以来だから、正に、4ヶ月ぶりの山での食事だ。
 食事をしている間にも、何組ものパーティが登って来ては、下って行く。
 
 約1時間休憩した後、雪の稜線を少し下って、展望台まで足を伸ばす。
 開けた北側の視界には、草津白根山や会津駒ケ岳、燧ケ岳、至仏山、武尊岳など、名だたる上州の山々が、残雪の峰を連ねているのが、曇り空の向こうに微かに望めた。

 ここから更に小黒桧山方面へ向かって大沼へ下るルートもあるが、上から見た感じでは残雪も結構あるし、登山者もあまり入っていないようなので、一旦、黒桧山に戻って、ノーマルルートを下ることにした。

 笹と雑木に囲まれた登山道は、西斜面とはいえ日当たりはあまりよくないため、残雪が多い。
 それなりに、登山者のつけたステップがあるにはあるが、蹴り込みが甘いのか、結構斜めになっていて、うっかり体重を預けると「ツルン」と行ってしまうので、安心はできない。
 雪の端に地面が出ているところは、そちらを歩くようにし、どうしても雪上を歩かなければならない時は、なるべく自分で新しいステップを切りながら慎重に下ったが、木の根元に固まったアイスバーンに気付かずに、ちょっとした段差を飛び降りた途端に、滑って尻もちをついてしまった。

 それにしても、この山は、随分人気があるようだ。
 しかも、子ども連れが多いのも、特徴だろうか?
 大きな岩が重なり合った急な坂を下っている時、前方に、男の子が立ち止まっている。
 下から、父親が「後ろの人を先に行かせてあげなさい」と云っているのだが、狭い通路で避ける場所はない。
 男の子の所まで行って「慌てなくて良いから、ゆっくり行こうね」と声をかけて、一緒に下りながら歳を聞いてみると「2年生になったばかり」とのこと。
 で、父親の待つ場所まで行くと、更に2人の子ども・・・
 男の子が「弟は5歳で、お姉ちゃんは4年生、お父さんは4●歳」と教えてくれた。
 
 -我が家でも、息子たちが小さい頃は、よく、こうやって山に連れてきたなぁ。

 そんなことを思い出しながら、下って行くと、5~6人の女の子を連れたパーティが登って来た。
 「こんにちは」と声を掛けると、一人の子が「てっぺん、ってあるんですか?」と無邪気に訊いてきた。
 「あるよ。あと1時間くらいかな・・・?」と応えると、今度は「おにぎり食べれますか?」
 「うん、食べれるよ。でも、落とさないようにね。下まで転がってっちゃうから(笑)」
 地域の育成部やPTAの活動から遠ざかって久しいが、こう云う、無邪気な子ども達との会話は、やはり、心が洗われる。
 「雪がたくさんあるから気をつけてね」

 子ども達と分かれて、急坂を暫く下ると、通称“猫岩”と呼ばれる、見晴らしの良い場所に出る。
 ここから先は傾斜も緩やかになり、「あっ」と云う間に、黒桧山登山口に到着。
 今年の初登りは、正味4時間と云う短時間のハイキングではあったが、後半は春山らしい醍醐味も味わえた楽しい1日だった。

 去年のGWには、瑞牆山の帰りに諏訪まで足を伸ばして1泊したので、今回は、「伊香保温泉にでも泊まろうか」と、観光協会に電話をしてみたが、「旅館はどこも一杯」と云うことだったので、諦めて、近くの「赤城温泉」で空室を探したが、やはりダメ!

 「仕方がない。今回は日帰りとするか!」

 てなわけで、奥さんの希望で、群馬フラワーパークに寄った後、日帰り温泉施設の「見晴らしの湯ふれあい館」に行ったのだが、東北地震の影響で露天風呂が閉鎖になっていて、がっかり・・・

 まぁ、たまには、こんな時もあらぁな (^^;

補足
 帰りに、関越道の寄居PAに立ち寄ったら、随分とオシャレな雰囲気になっていて驚いた。
 「星の王子様」をテーマに、建物もヨーロッパ風で、売っているお土産も「星の王子様」グッズと輸入食品がメインで、まるで、TDLのショップのような作りだ。
 う~ん、いわゆる「差別化」ってヤツだな。
 こう云う、オシャレなPAがあちこちに出来ると、高速道路を利用する楽しみが、また増えるのかも・・・

(本日のコースタイム)
駒ケ岳登山口(8:50)―――(9:40)駒ケ岳(9:45)―――(10:00)大タルミ(10:00)―――(10:30)黒桧山(11:45)―――(12:55)黒桧山登山口