両神山2009/05/02

山頂の岩峰に根付いたアカヤシオはほぼ満開だった
 先週までは「折角のゴールデンウィークなので、どこかに旅行でもしようか?(ETC割引もあるし…)」と、奥さんと話をしていたが、「どこ行っても混んでるンだろうな(ETC割引だから…)」ってことになって、結局、いつもの日帰り登山になった。
 で、どこに行こうと考えて、昨年の秋に、笠取山と比較して、「朝早く出なきゃならない」と言う理由にもならない理由で行くのを止めていた秩父の両神山を目指すことにした。(今回は、日の出が早い上、気温も暖かいので、早起きに大きな抵抗はなかった…つくづく軟弱者だと自己反省)

 朝5時に出発。
 いつもの如く、いつものコンビニで食料(今回は朝食も)を仕入れて、飯能経由(国道299号線)で秩父を目指す。
正丸トンネルを抜けると、遠くに秩父の山々が、霞の向こうに見え始める。
 途中、あしがくぼの道の駅に寄って(食べる直前にインスリンを打つ必要があるので、昔のように、運転しながら気の向くままに食べるわけにはいかず、どうしても一旦車を止めなければならない)、買ってきたおにぎりで朝食にする。

 日向大谷には、予定よりも30分以上も早く到着したが、バス停横の無料駐車場は既に満車で、わざわざUターンして少し下の駐車場に行くのも(そこから歩くのも)面倒なので、両神山荘の駐車場に停めることにした。

 両神山荘の脇を抜け、歩き始めて約30分で会所に到着。ここからは、左の薄川本沢沿いの一般ルートを辿る。
 私が始めて(そして1度だけ)この山に登ったのは27年も前になるが、夜8時過ぎに登り始めヘッドランプと僅かな月明かりだけを頼りに歩いた同じ道を、今日は、眩いほどの新緑と明るい木漏れ日の中を歩く。
 前回は梅雨の終わりで水量が多かったこともあって、轟々と地響きのように私の身体を震わせていた沢の流れも、今日は、耳に心地よい。
 最初は、沢伝いに右岸と左岸を交互に進むが、4回沢を渡ったところで道は沢から離れ、つづら折れの急な上り坂を清滝小屋まで登りつめる。
 5月の初めと言いながら初夏のような日差しの下では、この上りはかなりしょっぱい。「弘法の井戸」の湧き水で喉を潤すと、本当に生き返る感じだ。

 休業中の清滝小屋のベンチで一休みしていると、どこからともなく、ソフトバンクのお父さん犬によく似た白い大きな犬が現れた。とてもおとなしくて、人懐っこいその姿を見ていると、ここまでの疲れが一気に癒される。
 山頂に向けて登り始める前に、裏の水場を覗いてみたが、水量は少なく頭の上の岩から滴り落ちている程度だった。

 七滝沢ルートの分岐を過ぎて暫くつづら折れを登ると、やがて最初の鎖場に出る。が、ここは木の根と岩角を利用して三点確保で登れば、鎖もロープも特に必要はない。むしろ、鎖を頼りにして、スタンスとホールドを気にしないほうが、かえって危険である。一緒に北アを歩いた経験のある奥さんも、そこら辺のところは重々承知していて特に心配はないが、やはり、何年も山から遠ざかっていたので、動きはぎこちない。
 鎖場を越えて、木の間越しに両神山を眺めながら登ること約30分で両神神社に到着。
 ここから先は、ところどころ旧道(尾根道)が通行止めになっていて、木の根が入り組んだ足元の悪い斜面を歩かされる。我々登山者には関係ない地権者とのいざこざは、早いトコ解決してもらいたいものだ。

 山頂直下まで登ると、道の左右のアカヤシオが花をつけ始めている。まだ満開には間があるが、濃いピンク色の花が青い空に鮮やかに映えて、ここまでの疲れを忘れさせてくれる。
 最後の鎖場を登りきると、そこは360度の大パノラマ…
 奥秩父の峰々はもとより、雪を纏った富士山や八ヶ岳も、霞の向こうに望むことができて大満足!
 ところが、その直後に、私はとても不愉快な思いを味わうこととなった。

 山頂の岩峰の上に立って写真を撮ろうとした時、その事件は起こった。
 ワイワイガヤガヤと鎖場を登ってきた中年オバハン達の集団が、いきなり、私が立っている岩峰に上ってきて、「スミマセン」も「失礼します」の一言もなしに、私の周りにしゃがみ込んで記念写真を撮り始めた。
 2、3人がようやく立てる岩の上に、5人も6人もぞろぞろと上ってくるものだから、私は身動きがとれなくなってしまい写真どころではない。
 しかも、全部で20人ばかりの集団が、入れ替わり立ち代り同じことを繰り返すのだが、その間ただの一人も、挨拶する者も、私の場所を空けようとする者もいない。

 「な、な、何なんだ???」

 そんなオバハン連中よりももっと頭に来たのは、その連中を案内してきたオッサンだ。
 多分どこかのハイキングツアーのガイドなのだろうが、そうしたオバハン連中の傍若無人な行為に対して、注意するでもなく、自ら謝るでもなく、それどころか、居場所を奪われて困っている私を尻目に「さぁさぁ、早く登って…ハイ、写真撮りますよぅ」と、次から次へとオバハン集団を岩峰に登らせて、写真を撮り終えると、結局ヒトコトの挨拶もなしに降りて行った。
 山に限ったことではなく、こう言う場合、「スミマセン」の一声掛けるのが大人のマナーと言うものではないのか?

 この一団のお陰で、折角の楽しい気持ちが一気に落ち込んでしまったが、救いは、さっさと降りていってくれたことだ。
 少しは静かになったのでゆっくりと昼食をとって、山頂を後にする。この頃には、私の心もすっかり落ち着いていた。

 来る時は、同じ道で戻る予定だったが、時間が早かったので、七滝沢コースで下ることにした。
 七滝沢コースは「難所有り」となって上級コースと書いてあるガイドブックも多く、確かに、登山道の何箇所かは崩落していて歩くのに注意が必要だが、標高1500mを超える山であれば、この程度の崩落は一般的な悪場の範疇ではなかろうか?
 逆に言えば、この程度の崩落を「難所」として注意喚起しなければならないほど、山の厳しさを知らないで安易に山に入ってくる登山者”もどき”が増えていると言うことか?

 何はともあれ、分岐から七滝沢コースを下り初めて直ぐに現れるのが養老滝。
 約60度の傾斜のついた岩盤を、一直線に流れ落ちる姿は圧巻だ。
 悪場を歩く自信のない人でも、分岐からここまで往復する価値はあると思う。
 数箇所の鎖場を慎重に下り、滝カマチと呼ばれる場所に降りると、沢を渡って、今度は左に沢を見下ろしながら、眩い新緑の斜面を下る。
 その後も、変化に富んだ七滝沢の流れに沿って、いくつもの美しい滝を眺めながら、約2時間(途中、赤滝で30分休憩)かけて会所に到着。
 山頂では憂鬱な気持ちにもなったが、、最後は本当に心が洗われる思いで、今回の山歩きを終えることができた。

(本日のコースタイム)
日向大谷・両神山荘P(7:25)―――(7:50)会所(7:50)―――(9:10)弘法の井戸(9:10)―――(9:20)清滝小屋(9:35)―――(9:45)七滝沢ルート分岐(9:45)―――(10:05)横岩(10:05)―――(10:20)両神神社/御岳神社奥宮(10:20)―――(10:55)両神山山頂(12:10)―――(13:05) 七滝沢ルート分岐(13:05)―――(13:40)赤滝(14:10)―――(15:00)会所(15:00)―――(15:25)日向大谷・両神山荘P