笠取山ふたたび ― 2009/11/15

初冬の青空の下、新雪を頂いた富士山が大きく聳えていた
 午前5時半、表に出て空を見上げると、スジ雲ひとつなく晴れ渡った夜明け前の空に、いくつもの星が瞬いている。
 絶好の登山日和となりそうだ。

 一昨日まで、どこに行くか迷っていたが、ちょうど一年前に登った笠取山の紅葉がとても美しかったので、「もう一度あの紅葉を見よう」と思って、笠取山に決めたのが昨日の夕方。
 いつものことだが、本当に、行き当たりばったりの山歩きである。

 昨年よりも少し早めの6時45分に家を出て(今回はカメラも忘れずに持ったのでロスタイムなし)、いつものコンビニで、いつものごとくカップラーメンやお菓子を買い込んで、いざ、出発!
 いつもは、友田橋を渡って吉野街道経由で奥多摩に向かうが、今日は、青梅街道を走ることにした。
 普段は混んでいる青梅の街中もスイスイと走り抜けて、あっと言う間に奥多摩湖。
 湖畔の紅葉は今が見頃のようで、湖岸の道路脇には、カメラを持った観光客が何人も出ていた。
 峰谷橋を渡る手前で、スピードを落としながらちょっと見ると、確かに、湖面に映る紅葉がとても綺麗だ。
 「これなら、笠取の紅葉も綺麗だろうな」と心弾ませながら、車を走らせる。

 昨年は「土砂崩れで通行止めになっている」と言うガセネタで、落合まで上って高橋部落経由で作場平まで入ったが、今年は一之瀬川沿いに真直ぐ林道を上る。
 ところが、昨年は、綺麗な紅黄葉を眺めながら下った一之瀬林道には、茶色の落ち葉が路面一杯に散っており、斜面の木の枝にはほとんど葉が残っていない。
 「ありゃりゃ・・・」
 昨年は、黄金色に輝いていた対岸の斜面も、今日は冬枯れ色。

 作場平の駐車場には、昨年とほぼ同じ時間に着いたが、車の数は昨年の半分以下。
 もっとも、昨日、結構雨が降ったので、出足が悪いのかもしれないが・・・

 靴を履き替え小山支度を整えて、行動前の補食としてコンビニで買ったシュークリームを半分食べて、ランタスをいつもより2単位減らして打つ。
 隣の車はご夫婦のパーティで、都心から中央高速で勝沼経由で来たとのことで、帰りの交通渋滞を気にされていて、奥多摩経由の状態を尋ねられた。

 8時45分、出発。
 昨年は、登り始め早々道を間違えてしまったが、今回は間違うことなく登山道へ・・・
 昨日の雨で濡れた落ち葉を踏みしめながら歩いていると、直ぐに汗が出てきた。
 ヤブ沢分岐で、ダウンジャケットを脱ぐ。
 昨年は、この分岐を右に折れて一休坂経由で登ったので、今回は、真直ぐヤブ沢経由で行ってみることにした。
 こちらのルートは、沢沿いを登り詰めるコースで、あちこちに丸太で組んだ橋が渡されている。傾斜もそれほどきつくはなく、正に初心者向けのコースだ。
 登り詰めたところがヤブ沢峠。ここからは、幅2m以上の綺麗に整備された林道が左右に延びる。右に折れると笠取小屋、左に進むと倉掛山経由で柳沢峠まで抜けられる。
 尾根沿いの林道を暫く行くと、葉を落とした木々の間から、新雪を頂いた富士山が雄大な姿を覗かせる。
 そのすぐ左には、黒々とした三角錐の大菩薩嶺が並んでいる。
 直線距離では、大菩薩嶺は10kmちょっとに対して、富士山は50km以上も離れていると言うのに、富士山の方が遥かに大きく見えて、まるで、遠近感が麻痺してしまったようだ。

 山の斜面を左に巻いて正面に笠取小屋が見え始めると、煙突から白い煙が立ち上っている。
 どうやら、今日は小屋が開いているようだ。

 小屋前のテーブルにザックを降ろし、小休止。
 奥さんがトイレに行っている間、小屋の親父から聞いたところによると「今年の紅葉は1週間ばかり早かった」らしく、「その上、昨日の雨と風で、ほとんど落ちてしまった」らしい。
 昨年感動した、黒槐(えんじゅ)尾根の落ち葉の絨毯も、「昨日の雨で流されているだろう」とのことだった。
 残念!!
 戻ってきた奥さんと話し合って、今回は、水干を回ってこちらに戻ってくることにした。
 あのフカフカの落ち葉の絨毯を歩けるならば、中島川橋から作場平までの約2kmの林道歩きも苦ではないが、それがないなら、わざわざ向こう側に降りる気にはなれない。

 工事中のトイレの横を抜けて、板張りの道を暫く行くと、目の前に雁峠から古礼山への稜線が頭をもたげ、笠取山に続く稜線に飛び出す。
 振り返ると、雲ひとつない青空の下、富士山の7合目付近から上に積もった雪が、キラキラと輝いている。
 そのまま目を右に転じると、南アルプスから中央アルプスの稜線が連なり、更に、奥秩父の峰々に続く。
 そして、進行方向に向き直ると、目の前の小さな分水嶺の向こうには、笠取山山頂に向けて突き上がる急斜面が、葉を落とした木々の上にどっしりと聳えている。

 小さな分水嶺を越えて、一旦、40mほど下り水神社分岐を右に見て、それから最後の急坂を100mほど登り返すと、広い肩に辿り着く(ご丁寧に「笠取山 山梨百名山」の標識が立てられているため、昨年は、ここを笠取山山頂と間違ってしまったが、ここは、まだ山頂ではない)。
 今日は、南西からの風が非常に強い。ちょっと油断すると、バランスを崩して吹き飛ばされそうになるし、じっとしていると手がかじかんでくる。
 昨年はここで昼食にしたが、さすがに、この強風では、昼食どころか、ゆっくり腰を下ろすこともできない。
 富士山を背景に、奥さんと二人、お互いに記念写真を撮り合った後、展望パノラマを20枚ほど撮影しただけで、先に進むことにした。

 大きな岩を回り込んだところで、若い男女の3人組が、岩陰に風を避けながら食事をしていた。
 てっきり、ここが本当の山頂と思って周囲を見回すが、昨年建っていた立派な道標が見当たらない。疑問に思って3人組に「ここが山頂ですよね」と尋ねると、「そのはずですが、道標があった筈だが・・・」と、不思議そうな応えが返ってきた。
 3人組と分かれて、少し行くと、積み重なった大岩が現れる。
 滑らないように注意して岩を登りきると、目の前に「笠取山 1953m」と書かれた立派な道標が立っているではないか! 
 人間の記憶とは、何といい加減なことか・・・

 時計を見ると11時を過ぎたばかりで少し早いが、景色は良いし、岩と樹木で風が遮られているので、ここで昼食にすることにした。
 ザックを降ろしてコンロの準備をしていると、反対方向から男性登山者が登ってきて「水干に行く分岐は、どの辺りですか」と尋ねてきた。
 どこまで下っても分岐に辿り着けないので、心配になって登り返してきたらしい。「分岐までは、かなり下りますよ」と教えたが、急斜面の手前の水神社分岐まで戻ると言って下って行った。
 男性登山者と入れ違いに、先ほどの3人組が登ってきて、山頂の道標にびっくり・・・
 「(肩からは)結構、距離あったンですね」と、笑いあう。
 カップラーメン用の湯を沸かしているところに、作場平の駐車場から抜きつ抜かれつ同じルートを登ってきた夫婦が現れた。
 朝、コースを訊かれた時に、「最初に登りきったところは山頂ではなく、その先に、山頂がある」と話していたので、ここまで登ってきたそうだ。
 4人で、これまでに登った山の話などしながら昼食を摂り、約1時間の休憩。

 10分ほど下ったところで、先ほどの男性登山者が話していた「白い看板」が見えてきた。水干への分岐までは、ほんの数分の距離だった。
 
 多摩川の最長源流の水干には、昨日降った雨のお陰で、ちょろちょろと水が流れていた。
 多摩川の最初の一滴を指先につけて、口に含む。感激!

 帰りは、笠取小屋から水場の方に下って、昨年登ってきた一休坂経由で下った。
 紅葉には遅かったが、天気にも恵まれ、昨年以上の山岳展望を堪能できたので、とても満足のいく1日だった。

(本日のコースタイム)
作場平(8:45)―――(9:05)ヤブ沢分岐(9:05)―――(9:45)ヤブ沢峠(9:45)―――(10:00)笠取小屋(10:10)―――(10:45)笠取山の肩(10:55)―――(11:05)笠取山山頂(12:05)―――(12:20)水干(12:25)―――(12:50)笠取小屋(13:15)―――(13:55)ヤブ沢分岐(13:55)―――(14:10)作場平