笠取山 2013秋2013/11/02

 5年前の秋に初めて登った笠取山の見事な紅葉が忘れられず、毎年の恒例行事となった秋の笠取山行だが、時期がほんの少しだけ早かったり遅かったり、雨に降られたりと、なかなか納得のいく紅葉に巡りあえずに、今年も、この時期がやって来た。

 2週間前から、インターネットで周辺の紅葉情報と天気予報(天気予想図)をチェックしながら、ピンポイントで決めた3連休の初日。
 例年とほぼ同じ時間に家を出て、途中のコンビニで食料と飲み物を調達して、走り慣れた青梅街道(R411)を西に向かう。
 奥多摩湖を越えて丹波山村に入り、道路が大菩薩ラインと呼び名を変える辺りになると、道の両脇の斜面の色が、みるみる変わってくる。
 緑の針葉樹の間に、赤、橙、黄の鮮やかな紅葉が、縞模様を作っている。
 クネクネと曲がる道路に注意を払いながらも、眼は、ついつい、紅葉に染まった斜面に釘付けになり、その都度、助手席の奥さんから怒られる。

 新しく開通した一之瀬高橋トンネルを抜けて、国道を離れて一之瀬林道に入ると、見事な紅葉が、それこそ「手に届く」近さで出迎えてくれる。

「今年は期待できるぞ」

 はやる気持ちを抑えて、狭い林道を、紅葉を楽しみながらゆっくりと登って行く。

 作場平の駐車場には、例年より10分程度遅れただけだったが、既に沢山の車が停まっていて、これまでにない混雑だ。

恒例の笠取登山に、いざ出発

 ますます期待を膨らませて、8:45登山開始。
 昨年は、薄く垂れ込めた霧のなかに沈んでいた森林の散策路も、今日は、明るい朝の光を斑に映して、生き生きと感じる。
 気温も予想していたほど寒くはなく、暫く歩いていると、汗ばんでくるほどだ。

 一休坂分岐を右に折れて、一休坂に向かう。
 しかし、いつもなら赤や黄に染まって輝いている木々の葉が、今年は何となく暗い。
 1枚1枚の葉をよく見ると、枝に残っている葉の中には、赤や黄を通り越して、枯色に染まっているものが少なくない。
 夏が暑かったせいか、紅葉になる前に枯れてしまったのだろうか?
 道に積もった落葉も、何となく精彩を欠いて見える。
 一休坂付近まで登ってくると、ようやく、周囲の木々が明るく鮮やかに輝きだすが、それも、そんなに長続きはしない。

一休坂付近の紅葉は、まだ健在

 何となく期待を裏切られた様に感じながらも、木々の間から見え隠れする近隣の山々の斜面は、色とりどりの紅葉に染まって、眺めていても飽きがこない。

落ち葉を拾いながら、ゆっくり登る

 やがて、登山道は、木製の短い橋で小さな流れを渡り、笠取小屋への最後の登りとなる。
 道の脇の沢の水は、いつもより多く、激しく流れていて、いつもはなかった筈の道の左側の斜面沿いにも、流れができている。
 今年の夏は雨も多かったからだろう。
 そう云えば、ここまで来る途中の登山道にも、いつになく、沢山の木の実が落ちていた。
 今年は、この時期になっても、例年ほど熊の目撃情報が多くないのは、山が豊作だからなのかも知れない。

 笠取小屋前の広場で小休止した後、山頂目指して尾根道に出る。
 いつもなら、ここで振り返ると、山頂から1/3程度に白い雪を纏った富士山が、ひときわ大きく裾を広げた姿を現すのだが、あいにく今日は厚い雲に隠れて見えない。
 出掛けに見た天気予報の実況天気図でも、移動性高気圧は本州上空を通りすぎ、西から気圧の谷が近付いて来ているようだったので、半ば諦めてはいたが、実際、ここからの富士の雄姿が眺められないのは、やはり心残りだ。

 小さな分水嶺から笠取のニセ山頂を眺めるも、そんなに大勢の登山者で賑わっている様子は感じられない。
 何年か前は、駐車場はそんなに混んでいなかったのに、ニセ山頂が大混雑していたので、今日もよほどの混雑を予想していたのだが、少なくとも、ここから見る限りは、そんな気配は全くない。

草付きの急斜面を登る

 一旦、尾根道を大きく下り、水干への巻き道を右に見送って、草付きの急斜面をジグザグに登ること15分でニセ山頂に到着したが、混雑どころか誰もいない!?

 えっ?

 混雑していないのは喜ばしいことだが、あの車の主たちは、一体、いずこへ?

 間もなく冷たい風が吹き始めたので、ここでの休憩は取り止めにして、本物の笠取山頂まで進む。
 太陽が風に流れてきた雲に隠れてしまい、山頂から見下ろす近隣の山々の紅葉も、急速に色褪せてしまう。
 雲が切れるのを待ちながら、昼食とする。
 カップ麺を食べようと、湯を沸かし始めたのだが、何故か今日はなかなか沸かない。
 気圧が下がっているせいなのか、それとも、風がクッカーの熱を奪うのかは分からないが、いつもなら10分程度で沸く量に30分もかかってしまった。
なんと
 結局、昼食が終わるまで、風が途切れることも、頭上から雲が消えることはなかったので、山頂からの展望は諦めて下ることにした。

太陽が雲に隠れて、山頂からの展望も、どことなくもの寂しい

 いつもなら鮮やかに紅葉している水干に向う巻き道の木々も、今日はすっかり枯れてしまっていて、何となく寒々しい。

 ところが、黒槐分岐方面に下り始めると周囲の趣は一変し、鮮やかな赤や黄色に染まった木々が、出迎えてくれた。
 幅広の登山道には、5年前ほどではないが落ち葉が降り積もり、一歩進むごとに「サクサク」と心地よい音をたてる。
 こちらの道はあまり人気がないのか、いつ来ても、ほとんど人と行き交わない。
 今日も、前にも後ろにも人の姿はなく、この素晴らしい景色を一人(二人?)占め・・・

黒槐の分岐から下は、紅葉も落ち葉の道も素晴らしい

 やっぱり、秋の笠取は最高に素晴らしい。

(本日のコースタイム)
作場平駐車場(8:50)---(9:15)一休坂分岐(9:15)---(10:10)笠取小屋(10:20)---(11:10)笠取山山頂(11:50)---(12:15)水干(12:15)---(12:45)黒槐の分岐(12;45)---(13:45)中島川橋(13:45)---(14:10)作場平駐車場